結論から書きます。ブセファランドラを水上(鉢植え)で育てていて、根元や茎がふやけたように溶けてくるときは、ピシウム菌を疑います。Buce Lab では5年間、常時200株以上を水上で管理していますが、ピシウムが出やすいのは水やりの間隔が空いたとき・植え付けや株分けの直後・液肥を土の上からかけたときでした。対策の軸は、毎日の水通しと霧吹きで鉢の中を淀ませないこと、液肥は土の表面にかけないことです。園芸の病害の資料にも、この経験と重なる内容が書かれています。
こんなお悩みありませんか?
- 水上で育てているブセファランドラの根元が、黒っぽくふやけてきた
- 茎や葉柄が溶けて、株が倒れてしまった
- 「ピシウム菌」と言われたけど、何が原因でどう防げばいいのか分からない
結論:鉢の中を淀ませない・根を傷めない
ピシウムは「水が淀む」「根が傷む」が重なったときに出やすい病気です。Buce Lab の対策は、①毎日水通しをして鉢の中の水を入れ替える ②1日1回の霧吹きで湿度を保ちながら空気も入れ替える ③液肥は土にかけず、液肥を溶かした水に鉢の下側をつけて吸わせる ④温度を20〜25℃に保つ、の4つです。出てしまったら、傷んだ部分を取り除き、毎日の水通しを続けます。
ピシウム菌とは
ピシウム(Pythium)は、多くの植物の根や茎を腐らせる、土の中にいる病原体です。カビに似ていますが、「水カビ」と呼ばれる仲間で、水分の多い環境を好みます。米国ユタ州立大学のエクステンション(大学の農業普及機関)によると、ピシウムは休眠した胞子の形で土の中に長く残り、土が水で飽和すると、泳ぐ胞子をつくって根まで移動します。
米国北西部の大学が共同でまとめている植物病害の手引き(PNW Plant Disease Management Handbook)は、温室の観賞植物について、ピシウムはどの種類も水分が多い環境で強く助長されると書いています。また、苗や土、鉢、作業台の汚れからも持ち込まれるとしています。
Buce Lab で症状が出やすかった3か所
Buce Lab の栽培記録では、ピシウムの症状は次の3か所に出やすくなっています。
- ソイルと根元が接するあたり
- 茎から葉柄(葉の付け根の柄)にかけて
- 茎の先端(新芽が出てくるあたり)
どれも、ふやけたように柔らかくなり、溶けて崩れていきます。先端の成長点がやられると、その株の新芽が止まるので、見つけたら早めの対処が必要です。
ピシウムが出やすい4つの条件
| Buce Lab で出やすかった条件 | 資料に書かれていること |
|---|---|
| 霧吹きの間隔が空いたとき(1日1回のところ、1日飛ばす日が増えたとき) | 用土を乾かすと、根のまわりに肥料などの塩分が濃くなって根が傷み、そこからピシウムが入る(PNW) |
| 液肥を土の上からかけたとき | 肥料の与えすぎで塩分が高くなると根が傷み、ピシウムが入りやすくなる(PNW) |
| 植え付け直後・株分け直後など株が弱っているとき | 根の傷みがピシウムの入り口になる(PNW。植え替えの傷について直接書かれているわけではない) |
| 温度が高いとき(25℃を超えると出やすい印象) | ピシウムの種類によって好む温度は違うが、用土の温度が25℃を超えると増える種類がある(PNW) |
4つに共通しているのは、根が傷みやすい状態です。乾かしすぎも、肥料のかけすぎも、植え替えの傷も、根にダメージを与えます。ピシウムは、そこに入り込みます。
温度については、ユタ州立大学の資料では、ある種類は20〜25℃、別の種類は25〜30℃で感染するとされています。「低ければ安全」とは言い切れませんが、Buce Lab では20〜25℃に保っている期間のほうが出にくい、という実感があります。
Buce Lab の予防策
① 毎日水通しをする
水通しは、鉢の上から水を注いで、鉢底から水を通すことです。Buce Lab では、鉢底から出てくる水が透明になるまで流しています。これを毎日行います。鉢の中の古い水を新しい水に入れ替えるので、水が淀みにくくなります。
ただし、液肥を吸わせた直後は、さらっと流す程度にとどめます。しっかり流すと、せっかく吸わせた液肥まで流れ出てしまうためです。
なぜ効くのかを直接確かめた研究はありませんが、上の資料と合わせると、用土が乾ききるのを防ぎ、たまった肥料の塩分を流す働きをしていると考えられます。水通しは「常にびしょびしょにしておく」こととは違います。水がしっかり抜ける鉢と用土を使うことが前提です。
② 霧吹きは1日1回、換気も兼ねる
霧吹きは1日1回を基本にしています。ピシウムが増えたのは、この間隔が空いた時期でした。高圧で霧が出るタイプの霧吹きを使うと、霧と一緒にケースの中の空気も動くので、換気を兼ねられます。Buce Lab では、これで十分なのでファンは使っていません。
③ 液肥は土にかけず、下から吸わせる
液肥を土の上からかけると、ピシウムが出やすくなりました。今は、液肥を溶かした水を容器に入れ、そこに鉢の下側をつけて吸わせる方法にしています。このとき、水面が土の表面より下になるようにします。根元に肥料の濃い水がたまるのを避けるためです。液肥の種類や頻度は水上栽培の液肥の記事にまとめています。
④ 温度は20〜25℃
栽培部屋は20〜26℃で管理していますが、ピシウムを避けたい時期は25℃までに抑えるようにしています。
⑤ 植え方と鉢でも予防する
- 茎は埋めない。根がしっかり張った株は、茎が埋まらないように根を広げて植えます
- 根が少ない株は、茎の根元に水苔を巻く。株分け直後など根が少ないときは、茎の根元付近だけに水苔を巻いて、土に直接触れないようにします。茎の保護とピシウムの予防に加えて、水通しのときに株が倒れないよう固定する役目もあります
- 水が抜けやすく、扱いやすい鉢を使う。Buce Lab では「プレステラ」タイプのスリット鉢を使っています。水通しの効果が出やすく、ケースからの出し入れもしやすいためです
- 鉢や道具を使い回すときは洗ってから。PNW の手引きも、使い回す鉢などは消毒するよう勧めています
ピシウムが出てしまったら
- 溶けた部分を取り除く。ユタ州立大学の資料も、感染した部分は根ごと早めに取り除くよう勧めています。リゾームが黒く柔らかくなっていれば、その部分を清潔なハサミで切り落とし、固い部分だけを残します
- 毎日水通しを続ける。Buce Lab では、ピシウムが見えなくなってからさらに1週間ほど、毎日の水通しを続けています
- ほかの鉢から離す。ピシウムは水や土と一緒に移ります。ケースの中で隣の鉢に広がらないよう、症状の出た鉢は離しておきます
Buce Lab で一番つらかったのは、何年もかけて育てた株でも、ピシウムや少し手を抜いた時期に葉や茎が溶けると、一気に見た目が崩れてしまうことです。ブセファランドラは成長が遅いので、崩れた形が戻るまでに長い時間がかかります(成長速度の記事)。だからこそ、出てから治すより、毎日の手入れで出さないことを優先しています。
おすすめ2製品
プレステラ 90(2.5号)|水通ししやすいスリット鉢
約770円(グラスランド)。レビュー68件で★4.88。多肉植物や実生でよく使われるプラスチック鉢です。Buce Lab で使っているのもこのタイプで、水通しのときに水が抜けやすく、ケースからの出し入れもしやすいのが利点です。株の大きさに合わせてサイズを選んでください。
蓄圧式噴霧器 1L|霧吹きと換気を一度に
約1,890円(ものうりばPlantz)。レビュー40件で★4.65。ポンプで圧をためて霧を出すタイプの霧吹きです。手で何度も握る霧吹きより、細かい霧を続けて出せるので、ケース内の空気を動かしやすくなります。
よくある質問
毎日水をやると、かえって根腐れしませんか
水がたまったまま抜けない状態が続くと、ピシウムには好都合です。水通しは、水が鉢底からしっかり抜けることが前提です。水はけのよい鉢と用土を使い、受け皿に水をためたままにしないでください。
殺菌剤は使ったほうがいいですか
Buce Lab では、ピシウムに殺菌剤は使っていません。水通しと環境の見直しで対処しています。殺菌剤を使う場合は、使える植物や病気が製品ごとに決められているので、ラベルの適用と使い方を必ず確認してください。
水中で育てていてもピシウムは出ますか
この記事は水上(鉢植え)での経験をもとにしています。水中で葉やリゾームが溶ける場合は、原因の切り分け方が異なります。溶ける原因と対処の記事を参照してください。
まとめ
- ピシウムは水分の多い環境を好む「水カビ」の仲間。傷んだ根から入り込む
- Buce Lab で出やすかったのは霧吹きの間隔が空いたとき・液肥を土にかけたとき・植え付けや株分けの直後・高温のとき
- 予防は毎日の水通し、1日1回の霧吹き(換気を兼ねる)、液肥は下から吸わせる、20〜25℃
- 茎は埋めず、根が少ない株は茎の根元に水苔を巻いて土に触れさせない
- 出たら溶けた部分を取り除き、見えなくなってから1週間ほど水通しを続ける
この記事で紹介した用品
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出典:症状の出やすい場所・出やすい条件・予防と対処の方法は Buce Lab の栽培記録(栽培歴5年・常時200株以上の水上栽培)。ピシウムの性質(水分の多い環境で助長される、根の傷みや肥料の塩分・乾燥との関係、温度、汚れた鉢などからの持ち込み)は PNW Plant Disease Management Handbook「Greenhouse Plants, Ornamental — Pythium Seed Rot, Damping-off, and Root Rot」。休眠胞子と泳ぐ胞子、種類ごとの感染温度、感染部分の除去は Utah State University Extension「Pythium Root and Crown Rot」。いずれもブセファランドラを対象にした研究ではありません。製品の価格とレビュー件数は楽天市場の商品ページ記載(2026年10月16日時点)で、変動します。